家族のために織り、大切に受け継がれてきたキリム。時間と共に増していく風合いはこの世に1枚しかない特別なもの。
赤や青のインクをぽとっ、ポトっと落としたような水の中、幾つもの少し歪みのあるひし形モチーフはまるで月か星が変身し、浮遊しているクラゲのような不思議なモチーフ。このキリムが織られたイラン西部に位置するイラムの町はイラクの国境にも近い乾いた山がちな土地ですが、所々にある水源の水面にゆらゆらと映った月を写し取ったのでしょうか。(クラゲは漢字で「海月」とも書くのですね。)
イランがまだ王朝だった1950年代に織られたというこのキリム、おそらく当時は各地で営まれていた遊牧生活のテント内で使われていたと思われます。織られた当初ははっきりした色合いだったと思われる赤や青の染めは十分に使い込まれ、少しずつ羊毛そのものに戻っていくかのように淡くなり、ゆったりとした時の流れを感じさせます。
傷んだ部分を何回も仕立て直し、補修の跡や洗っても取れない汚れはあるものの、ウールの経糸は同じ素材の緯糸に比べて細く、隙間なくしっかりと詰まった織りは室内よりもベランダやガレージ、バックヤードなどのラフな空間にぴったり。
自然の厳しさに対処しながらも、ゆったりと身に任せて暮らしていた風景が目に浮かぶような一枚です。
*綴れ織とは…平織りの一種で、最もシンプルな織り方。緯糸のみで文様を出す為に経糸が見えないように打ち込まれ、文様の境目は折り返して織るため、二色の境界でたて糸に沿って間隙ができます。エジプトで出土したコプト織など、紀元前には既にこの織り方が広まっていたといわれています。
*商品写真につきましては、できるだけ実物に忠実に掲載するよう心がけておりますが、PC環境や撮影状況によってはお客様が実際手にとられたものとイメージが違う事がございます。何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。(画像をクリックすると、拡大できます。)
*ヴィンテージキリムについての詳しいご案内もぜひ御覧ください。