「GQ Japan」インタビュー記事から1
メンズファッションの雑誌「GQ Japan」から、こんなインタビュー記事を見つけました。
ファッション界のデザイナーの方にインタビューしたウールにまつわるお話のシリーズ。
絨毯やキリムの主材料であるウールは衣類に使用される羊毛は主にヨーロッパなどで改良され、
敷物用の羊毛とは品種が違いますが、人間でも剛毛、猫っ毛、直毛、クセ毛、くるくるの毛、
黒髪、金髪‥と色々。それと同じように色々特徴があっても、羊毛の基本的な構造や特性は
どれも殆ど変わりありません。
知っているようでなかなか奥深いウールのことを身近に感じていただきたくて、何回かにわたって
取り上げたいと思います。
初回は山本耀司さん。
インタビュー記事からとても印象に残ったのは
「‥僕の理想は、ファッション・デザイナーをはじめたころから、ノマド(nomad)なんです。財産全部、
着込んじゃっているというね。
まあ、30cmぐらいそばまでいくと臭い。臭うんですけど、でもカッコいい。それが僕の理想で、それを
追い求めて服をつくって40年ちょっとたちますが、ノマドの人たち(放浪者)のファッションには勝て
ないです。“人生を懸けた服”“生活を着てる”という意味合いで(勝てない)。それが僕の憧れだし、
いちばんやりたい服づくりなんですけども」
という言葉。
イランクルド族の女性
私たちは住む場所や食べるものがなくては生きていいけないように、服がなくては暮らしていけない。
その中で、自分が心地いいもの、または心地よくなれるもの、自分らしさを感じられるものを自分で
選び取る。どう見られたいか(人が作った基準)ではなくて、どう生きていきたいか。
(場合によっては生きていかなくてはいけないときもあるでしょう。)
それが解っている人はその気持ちにあった服を自然に纏うようになる。自分の気持ちに正直になり、
周りに振り回され過ぎることなく自分の人生を続けて行くことが、即ちサスティナブルということ
なのでしょう。
山本耀司さんはそれを体現しているのがnomado、(遊牧民)なのだと。
記事はこちら
https://gqjapan.jp/fashion/interview/20160719/talk-about-wool-vol1-yohji-yamamoto
Tiny knotsの扱う絨毯やキリムを作っているイランの遊牧民の衣生活を支えているのは、自分たちが
飼っている羊やヤギ。肉やミルクが彼らの食を、皮や毛はテントや床材として絨毯・キリム・フェルト
となり、彼らの暮らしを支えています。羊は彼らの財産そのものなんですね。
衣服ももちろん羊の毛から作りますから、羊は彼らの財産そのものであり、その財産を常に身につけて
いることになりますね。
そんな視点から、なぜ何十年も前に織られたオールドが
自分の心を惹きつけるのか、考えてみると、
あまりうまく表現できないのですが、
長い間使い込んだウールが持つ、少しくたびれたような独特の風合いや滑らかさ以外に、自分や大好きな誰かが使うことを想像しながら、自分のものとして織り、使い続けたという、その人の時間の経過の積み重ねが織り目の間から見え隠れするからなのではないかと。
何を着るか、どのように暮らすか、毎日の積み重ねがその人の人生を作っていくことになるんですね。
山本耀司さんのインタビュー記事を読んで、人間の生活に羊毛が深く関わっていることを感じました。
世界規模の流れとして、イランでも近代化は相当に進んでいて、遊牧生活をやめて都市部での生活をする人々も増えており、遊牧生活から生まれた絨毯やキリムは年々少なくなっているのも事実ですし、それは抗えないものです。(数十年もしないうちに遊牧民はいなくなるのではないかと言われています。)
そんな中、自分のできることとは何か、何を伝えられるのか、改めて考えるきっかけになったと思います。
(追:Tiny knotsの扱うイランの遊牧民由来のキリムや絨毯はもちろん、クリーニングした上で輸入されていますので、羊毛独特の「匂い」はあれど、「臭い」はありませんよ。 念のため!)